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EVSEテストの重要性
一般的に充電ステーションで知られる電気自動車給電装置(EVSE)は、内燃機関からの移行における重要なコンポーネントです。ステーションの可用性(稼働時間と信頼性)と充電速度は、EVを採用する際の主要な要素です。
さらに、EVSEは、IEC 61851およびSAE J1772などの主な規格に準拠する必要があります。
デバイス、モジュール、システムの各レベルで、エンジニアは信頼性を向上して安全性を維持しながら、充電電圧を高めることにより、充電時間の短縮に取り組んでいます。スマートで柔軟なテスト・ソリューションを使うと、設計のトラブルシューティングと検証をすばやく実施できるようになります。
ソリューションには、高度な電力解析ソフトウェアと高確度DMMを備えた高性能オシロスコープがあり、EVSEの性能測定や、高電圧、高容量、放電状態のバッテリをシミュレートする負荷として機能する双方向電源があります。
完全なベンチ・セットアップを確認するEVSEテスト装置と技法
EVSEシステム- 機能ブロック
最先端のDC急速充電期は、電力網からの三相ACを高電圧DCに変換します。システムは、以下で構成されています。
- 力率補正とAC/DCコンバータ
- DC/DCコンバータ
- 制御システムと電源管理
- ユーザ・インタフェース
- LAN/移動体通信
- 高電圧充電と通信車載ボード
これらの各ブロックは、テストが必要です。詳細については、以下のソリューションをご覧ください。
力率改善(PFC)とAC/DC変換テスト
公共送電網に接続するよう設計された充電器は、地域の送電網に対する影響を抑制する必要があります。これができなければ、事業者は高額なエネルギー料金や罰則を受けることとなります。ほとんどの電力会社は、90~95%未満の力率に対して料金を課しており、その多くが高調波規格の遵守を義務付けています。
DC急速充電機器の入力段では、三相ACをDCに変換するだけではなく、高い力率と低い高調波歪みを確保しながら、高い効率と信頼性を維持する必要があります。
高度なパワー解析ソフトウェアを備えるオシロスコープベースのシステムは、高い確度と再現性で以下のような測定を容易にします。
- ライン側の電源品質
- 力率
- 高調波
- 過電圧/低電圧保護
- スイッチング特性
- タイミング(デッド・タイムなど)
- ダイナミック・スイッチング損失
- ダブルパルス・テスト
- 出力リップル
- 効率
DC/DCコンバータとゲート・ドライバの解析
高出力DC/DCコンバータは、車両充電ポートのPFCブロックと電圧レギュレーション間を絶縁します。高周波数トランスは、絶縁とエネルギー貯蔵によく利用されます。高速SiC MOSFETには新設計が採用され、効率と電力密度がさらに高まっています。
SiC MOSFETSの速いスイッチング速度と電圧レベルは、高い帯域幅とコモンモード電圧を原因とする測定課題を引き起こします。EVSEテスト機器ソリューションには、光学的に絶縁されたプローブと解析ソフトウェアを備えるオシロスコープがあります。この光学的に絶縁されたプローブと解析ソフトウェアを備えるオシロスコープは、スルー・レートやコモンモード電圧信号が高くても正確な測定を実現します。その機能には次のものがあります。
- ピーク突入電流
- 過電圧/低電圧保護
- スイッチング解析
- ミラー持続時間とキャパシタンス
- ゲート抵抗と電荷パラメータ
- デッド・タイム
- スイッチング損失
- インサーキット・トランスとインダクタの測定
- 制御ループ性能(PSRRおよび利得/位相マージンなど)
- リップル、ノイズ
- EMI/EMC解析
制御システムと電源管理解析
組み込みコントローラは、充電プロセスの頭脳です。充電中、車両との通信を処理し、電力の潮流を調整して、安全状態を監視します。また、ユーザー・インターフェースやデジタル・ネットワークとも通信します。
これらのサブシステムには通常、プロセッサ/FPGA、クロック、電源レール、メモリ・システム、通信ICなどが含まれており、多くの場合、低振幅のGHz信号で動作します。これらのシステムは、過酷な物理的および電気的環境で動作するため、高いノイズ耐性とパワー・インテグリティが求められます。
これらのシステムの検証とデバッグには、以下のような主な測定値が必要です。
- 電源レールのリップルとノイズの解析
- インピーダンス測定
- 電源シーケンス
- AC DCコンバータ
- スイッチングおよびタイミング解析
- ローサイドおよびハイサイド・スイッチ間のデッド・タイム解析
- トランスとインダクタの磁気解析
- 制御ループ解析
- 通信シグナル・インテグリティ
- EMI/EMC解析
車両インターフェースの測定とデバッグ
充電ステーションと車両バッテリ管理システム間の信頼性の高い通信は、充電プロセスを管理し、安全を維持するために重要です。
IEC61851準拠の充電器には、制御パイロット(CP)信号が組み込まれています。CP信号のデューティ・サイクルは、EVSEからEVに最大限利用可能な電流を伝達します。この信号は、オシロスコープにより検証できます。電力線通信(PLC)は、充電プロセス中の通信でこのラインに重ね合わされることがあります。一部のインターフェースでは、EVSEとEV間の通信をCANを介して伝送されるシリアル・データに依存しています。
いずれの場合でも、オシロスコープはシステム全体の信号品質を確認し、減衰、ノイズ、不正な終端を検出するのに貴重な役割を果たします。ほとんどのテクトロニクスのオシロスコープには、CANバス・デコードとトリガ が実装されており、他のシステム・レベル・アクティビティと同期されたトランザクションを表示することができます。
データ通信の伝送のほか、充電インターフェースは指定された限度内に電流と電圧を維持しなければなりません。例えば、充電器は車両へのDC出力に対するライン電圧の過渡現象、サージ、下落の影響を指定されたレベルと時間に抑える必要があります。
EVSEの検証とデバッグのための主な測定には、次のようなものがあります。
- 通信信号の完全性/ノイズ
- DP信号のデューティ・サイクル
- システム・タイミング
- DC出力のノイズ
- 出力レギュレーション
ユーザ・インターフェースとネットワーク通信分析
ユーザー・インターフェース・デバイスは、多くの場合、標準のシリアル・バス(RS-232、SPI、USBなど)を介して制御システムに接続されています。ネットワーク通信は、充電ステーションの運用者とユーザーの両方に重要な情報を提供します。オシロスコープとアクティブ・プローブは、ユーザー・インターフェースの接続、LANおよびワイヤレス通信の信号とタイミングの評価に最適です。テクトロニクスのオシロスコープは、RS-232からワイヤレスNFCへの25シリアル・バスを介したデコードをサポートしています。
主要な測定項目:
- 信号の完全性/ノイズ
- システム・タイミング
- CANバス・デコード
- LAN
- NFCデコード
- ベースバンドRF
- EMI/EMC解析
EVバッテリのシミュレーション
EVSE をテストするには、放電したバッテリのように動作する負荷が必要です。 双方向電源は、さまざまな電圧レベルで電流をシンクしたり、ソース電流をシンクしてバッテリをシミュレートしたりできます。 双方向電源は、放電したバッテリに供給される高充電電流と完全充電状態付近で供給される低電流をシミュレートするために、広い電流範囲を引き込む必要があります。 また、EVバッテリパックの電圧が上昇しても充電するには、電源の定格電圧が800Vを超える必要があります。 EV充電器がより高速な充電に対応するにつれて、そのテストに使用される電子負荷は、より大きな電力を扱うことができなければなりません。
高い精度と安定性により、安定した再現性のある電圧および電流レベルが可能になり、すべての電気自動車が同じ負荷条件にさらされるようになります。 立ち上がり時間と立ち下がり時間が速い負荷により、充電器の負荷調整を厳密にテストできます。
大電力を供給するEVSEでは、試験中のEVSEと電源自体の保護を確保するために、電源に過電圧、過電流、過熱の監視が必要です。 EVSE テストは多くの場合、コンピュータ制御下で実行されるため、USB、イーサネット、CAN、RS-232、EtherCAT インタフェースなどの確実なプログラミング・インタフェースが必要です。
EVSEテストのリファレンス・ソリューション
ニーズに合ったEAバッテリ・シミュレータなど、効果的なテスト・セットアップを作成するガイドとして、以下の表を含めました。ここでは、主要な機器、プローブ、オプションを数量や説明と共に記載しており、それぞれ個々の要件に合わせて調整が可能です。
機器/プローブ/オプション | 数量 | 概要 |
EA 10000シリーズ | 1 | 双方向DC電源とバッテリ・シミュレータ |
MSO56B型 | 1 | 6個の入力チャネルを備える5シリーズB MSO |
Opt. 5-BW-500 | 1 | 周波数帯域:500 MHz |
Opt. 5-SRAUTO | 1 | CAN、CAN-FD、LIN、FlexRayバスのデコードとトリガ |
Opt. 5-PWR | 1 | パワー測定/解析 |
Opt. 5-SV-RFVT | 1 | Spectrum View:RF対時間の波形とトリガによるEMI/EMCトラブルシューティング |
TCP0030A型 | 2 | 2つの電流プローブ |
TMDP0200またはTHDP0200 | 2 | 2つの高電圧差動プローブ |
TLP58 | 1 | 8チャネルロジック・プローブによるプロトコルとミックスド・シグナル解析 |
TPP0500B型 | 1 | 電圧用受動電圧プローブ6個(オシロスコープに付属) |
ケースレーDMM6500 | 1 | 6.5桁マルチメータによる精密測定 |
FAQ
EVとEVSEシステム間の通信テストが重要な理由
- ユーザー体験の向上:効果的な通信テストを実施することによって、電気自動車(EV)と充電ステーションがシームレスに連携し、EVオーナーがスムーズで手間のかからない充電をできるようになります。これは、充電インフラに対するユーザーの満足度と信頼性には不可欠です。
- 安全性と信頼性:通信テストにより、充電システムの潜在的な安全上の問題や脆弱性を検出し、これに対処できます。リスクを特定して緩和することにより、EV充電の全体的な安全性と信頼性に貢献します。
- 相互運用性:相互運用性テストを通じて、異なるEVモデルと充電ステーションが効果的に連携するよう保証できます。これは、ユーザーが様々な充電オプションから選ぶことができるオープンでアクセスしやすいEV充電エコシステムの構築にとって極めて重要です。
- 規格の遵守:多くの国と地域には、EV充電の通信プロトコルに関して独自の規格があります。テストを通じてこれらの規格を遵守することで、充電システムが規制要件に適合するようにできます。
パワー・コンバータの検証に実施される一般的なテスト
- 効率テスト:パワー・コンバータとPVインバータの効率をテストし、電気エネルギーの変換効率を評価します。エネルギーの無駄を低減し、システム性能を最適に維持するには、高い効率が不可欠です。
- 安全性の確認:安全テストでは、加熱、短絡、電気障害などの潜在的リスクに対して電源ブロックを評価します。これらの部品の安全性は、事故やシステム障害の防止に不可欠です。
- 性能の検証:性能テストでは、負荷の変動や環境要因などのさまざまな条件下で操作する電源ブロックの能力を評価します。これにより、信頼性が高く、安定した性能を確保できます。
- 電磁両立性(EMC)試験:EMC試験では、電源ブロックが電磁干渉を放出し、外部干渉の影響を受けていないことを確認します。EMC規格への準拠は、その他の電子機器が存在する環境で、トラブルのない稼働に不可欠です。
- 温度プロファイリング:過熱は部品の損傷につながるおそれがあるため、これを防止するには、温度の監視が不可欠です。温度プロファイリングでは熱に関する潜在的な問題を特定して、安全な稼働を維持できるようにします。
EVSEテスト機器の用途
- 適合性の検証:EVSEテスト機器は、電気自動車電源装置(EVSE)の適合性を国際的な充電規格に準じて厳しく確認するために使用されます。この確認には、送電網との関わり方、通信プロトコル、電圧および電流レベル、ならびに安全規格へのコンプライアンスの評価が含まれます。
- 相互運用性の評価:テスト機器は、さまざまなEVモデルと充電ステーションとの互換性を評価するためにも使用されます。相互運用性のテストは、すべてのユーザにとってのシームレスな通信と信頼性の高い充電を確保するうえで極めて重要です。
- 安全性の確保:絶縁、接地、漏電遮断器(RCDやGFCIなど)を含め、ユーザと機器を衝撃や損傷から保護するシステムの安全性テストが実施されています。
- パフォーマンスの最適化:EVSEテスト機器は、充電ステーションのパフォーマンスの最適化をサポートします。エンジニアはこれらのツールを利用して、安全性と信頼性を確保しながら、効率性の改善や充電時間を短縮を行います。
研究開発におけるEVSEテスト機器の使用方法とは?
EVSEの設計プロセスにおいて、エンジニアはテスト機器を使用してサブシステムとシステムを起動させ、全体としての検証を行います。
- さまざまな充電シナリオのシミュレーション:エンジニアはEVSEテスト機器を使用し、異なる車種や充電条件を模倣してさまざまな充電のシナリオをシミュレートします。
- 通信の監視:EVSEとシミュレーション対象車両との通信を監視して、シグナル・インテグリティやタイミングに異常がないか確認します。
- 電力出力の測定:エンジニアはさまざまな負荷条件下で電力出力を測定し、EVSEが必要とされる電力を安全かつ効率的に提供するようにします。
- デバッグと検証:設計者は設計プロセス中にテスト機器を使用して試作品を起動させ、新製品の性能の検証を行います。
- 信頼性の検証:エンジニアは最後に、充電ステーションがさまざまな環境条件下で種々の電気自動車に対し、高い信頼性を維持しながら機能していることを検証します。
パワー・エレクトロニクスとEVシステムの分野で代表的な測定
- 電圧測定:パワー・エレクトロニクスやEVシステム内の電位評価に電圧測定は不可欠です。これにより、電気回路の動作を詳細に把握でき、安全な電圧限度内で動作するようにできます。
- 電流測定:電流測定では、パワー・エレクトロニクスおよびEVシステム内の電荷の流れを測定します。高い確度の電流測定は、電力消費量を監視し、電気部品の安全性を確保するのに不可欠です。
- 温度監視:過熱を防ぎ、パワー・エレクトロニクスとEVのバッテリ・システムの確実に長持ちさせるために不可欠です。また、安全で効率的な稼働も確保できます。
- 力率(PF)解析:力率測定は、パワー・エレクトロニクス内の電力変換効率を評価します。高い力率は、効率的なエネルギー使用を示しており、無駄とエネルギー・コストの削減につながります。
- 高調波解析:高調波とは電気波形の望ましくない歪みであり、システム性能に影響を与えるおそれがあります。高調波解析により、これらの歪みを特定して軽減することで電力品質を維持できます。
- 効率測定:効率測定では、パワー・エレクトロニクスとEVシステム内で電力がどれほど効果的に変換され、利用されているかを評価できます。高い効率は、エネルギーの無駄を削減し、コスト効率よく稼働するために不可欠です。
- 電圧リップル:電圧リップル(変動)は感度の高い電子機器の動作に影響を与える可能性があります。リップルの監視と最低限に抑制することは、安定した信頼性の高いシステム性能を確保するために重要です。
- 充電状態(SoC)測定:SoC測定は、EVのバッテリ管理に特に関連性が高いです。これにより、バッテリ内の利用可能なエネルギーを決定して、高い確度で走行距離を推定して、過放電を防ぐことができます。
- DCバス電圧測定:DCバス電圧を監視すると、システムの安定性やインバータやパワー・コンバータなどの重要な部品を保護できます。これは、安全で信頼性の高い稼働に不可欠です。
- エネルギー消費量監視:エネルギー消費量を測定すると、エネルギーの使用効率を詳細に把握でき、EVおよびパワー・エレクトロニクス用途の最適化とコスト削減を可能にします。これにより、電力使用を効率よく管理して、改善の必要な領域を特定できます。
- 絶縁試験:絶縁試験により、電気の安全性を確保して、電気的危険を防止できます。これにより、回路と部品を適切に絶縁し、障害の可能性を解消して、安全な稼働を保証できます。