小型、軽量設計によるパワー密度の利点は、スペースが限られている場合や電気自動車などのモバイル用途で明らかですが、コンパクト・パワー・エレクトロニクスはより広い分野において魅力的です。また、行政による財政刺激策、より厳格なエネルギー効率規制の導入により、効率はより重要になっています。EU(European Union)のEco-design Directive、米国エネルギー省の2016効率規格、中国のCQC(China's Quality Certification)など、国際的な機関が発行するガイドラインは、電気製品/機器のエネルギー効率要件を管理しています。近年の効率、パワー密度の進化は、SiC(炭化ケイ素)やGaN(窒化ガリウム)を使用したワイド・バンドギャップMOSFETによって可能になっています。
このワイド・バンドギャップMOSFETの高速スイッチング特性を最大限に活用するためには、エンジニアはスイッチング損失とEMIのバランスをとって回路性能を評価する必要があります。ダブル・パルス・テストは、スイッチング・パラメータを測定し、パワー半導体の動的な振る舞いを評価する優れた方法です。このテストは、デバイスのターンオン、ターンオフ時のエネルギー損失、逆回復パラメータの測定で行うことができます。
テクトロニクスの4シリーズMSO、5シリーズB MSO、6シリーズB MSOには、ダブル・パルス・テストによる測定を自動で実行する機能があり、AFG31000シリーズ任意波形/ファンクション・ジェネレータはダブル・パルス・テストを簡単に実行するためのソフトウェア・アプリケーションを内蔵しています。
一般的なダブル・パルス・テストの波形は、オシロスコープで取込み、測定します。ターンオン、ターンオフのパラメータを計算するため、最初のパルスの立下りエッジと2番目のパルスの立上りエッジを測定します。ゲート領域の設定にばらつきがあると再現性に影響するため、注意が必要です。十分に注意しても、寄生容量によるリンギングのために再現性のある結果が得られないことがあります。テクトロニクスの4/5/6シリーズMSOのワイド・バンドギャップ・ダブル・パルス・テスト・アプリケーション(Opt. WBG-DPT)は、正確なダブル・パルス測定でテストが容易に行えます。このアプリケーションは、JEDEC、ISC規格に沿ったスイッチング、タイミング、ダイオードの逆回復測定を自動で実行します。詳細な設定オプションにより、実際の波形の解析や規格仕様を超えたテストが可能です。
逆回復(リカバリ)電流は、2番目のパルスのターンオン時に発生します。この例では、ハイサイドのMOSFETで測定します。ハイサイドのMOSFETでIdを、ダイオードでVsdを測定します。再びローサイドのMOSFETがターンオンすると、ハイサイドのダイオードはただちに逆ブロック状態に切り替わります。しかし、ダイオードは短時間、逆方向に導通します。これが、逆回復(リカバリ)電流です。このリカバリ電流がエネルギー損失となり、パワー・コンバータの効率に直接影響を及ぼします。
ダブル・パルス・テストでは、ローサイドのゲート・ドライブ用の信号源が必要になります。通常、電圧と電流の測定にはオシロスコープを使用します。ダブル・パルス・テストでは、パルス幅の異なる2つの電圧パルスが必要になります。このパルス列のセットアップが難しいのです。一つの方法としては、任意の波形を生成し、それを任意波形ジェネレータにロードします。もう一つの方法は、マイクロコントローラ基板の使用です。どちらの方法もセットアップに多くの時間がかかり、パルス・パラメータの調整も難しいのです。テクトロニクスのAFG31000シリーズ任意波形/ファンクション・ジェネレータは、異なる幅のパルスが前面パネルから簡単に生成できます。AFG31000シリーズのダブル・パルス・テスト・アプリケーションは、セットアップとパルス出力が迅速に行えるため、設計/テスト・エンジニアはデータの収集、より効率的なコンバータの設計に集中することが可能になります。
4/5/6シリーズMSOのWBG-DPTダブル・パルス・テスト・アプリケーションは規格独自のテストが可能であり、デバイスの振る舞いが解析でき、マニュアルによるテストに比べて時間が短縮できます。このアプリケーションには、正しい波形を取込むためのプリセット機能、規格以外のテストを行うための詳細な設定オプション、ノイズの多い波形を解析するための信号調整機能、ナビゲーションと注釈機能が含まれています。
AFG31000シリーズと4/5/6シリーズMSOによるダブル・パルス・テストの自動セットアップと解析機能は、テスト時間を大幅に短縮し、次世代のパワー・コンバータの市場投入までの時間を短縮します。ダブル・パルス・テストの詳細については、アプリケーション・ノート「オシロスコープと任意波形/ファンクション・ジェネレータを使用した、パワー半導体デバイスのダブル・パルス・テスト」をご参照ください。