組み込みエンジニアにとって、オシロスコープを使いこなすことは「必須のスキル」であると言えます。電子回路の設計者はもちろんのこと、プログラマにとっても、自分が書いたソフトウェアは正しく動作しているのか、そのバグはハードウェアとソフトウェアのどちらに潜んでいるのか...といったことを知るために、オシロスコープは強い味方となります。
そこで本記事では、オシロスコープの使い方や見方などについて、初心者にも分かりやすく解説していきます。
オシロスコープとは?
まずは、そもそもオシロスコープとはどういったものなのかについて述べます。目に見えないものの代表として「電気」があります。18世紀、電気がまだ研究の対象であったころ、研究者にとって電気は目で見ることすらかなわず、「電気の挙動」を観測することは夢のまた夢でした。
20世紀に入って、この究極の夢を実現するものが出てきました。それが「オシロスコープ」です。つまり、オシロスコープは「電気の挙動」を目に見えるようにした測定器のひとつです。電気の存在は、物質を摩擦させて生じた引力によって分かりましたし(図1-1)、箔検電器によっても分かりました。
しかしその大きさ(電圧)を知るには、メータ式電圧計(図1-2)の登場を待たなければなりませんでした。
メータ式電圧計により、電圧(大きさ)が測定できるようになりましたが、高速で変動しメータの追従能力を超えるような「電圧の挙動」は観測しようがありません。重いメータ針を微小な鏡に置え、「電圧の挙動」により反射光を変動させ印画紙に焼付ける装置(電磁オシログラフ)が出現し、夢に少し近づきましたが、機械的構造であるため追従性に大きな限界がありました。
1897年にドイツで開発されたブラウン管は、蛍光面に向かう電子ビームを「電圧の挙動」によって偏向し、電子ビームが当たり発光した蛍光面の軌跡を見るものです。その軌跡が「電圧の挙動」そのものであり、追従性問題は構造的にクリアされました。
このブラウン管技術と電磁オシログラフのアイデアを組み合わせた結果、1934年にアメリカのDuMont社によりオシロスコープが商品化されました。初期のオシロスコープは必ずCRT(ブラウン管の一種)を表示部に用いて、「電圧の挙動」で直接電子ビームを偏向するというものでした(図1-3)。
そして1980年にデジタルストレージオシロスコープが現れてからは、これと区別するために、この初期のオシロスコープはアナログオシロスコープと呼ばれるようになりました。デジタルストレージオシロスコープは、「電圧の挙動」で直接電子ビームを偏向しません。「電圧の挙動」はA-Dコンバータによりデジタル化され、内蔵コンピュータで処理された後、表示部に現れます(図1-4)。
以降、文中で特別な断りがなければ、「オシロスコープ」はデジタルストレージオシロスコープを指すこととします。
オシロスコープとマルチメータの違い
電圧を測るとき、まず頭に浮かぶ測定器はマルチメータ(テスタ)でしょう(図1-5)。
変動のない直流電圧や安定した低周波の交流電圧なら手軽に測定できます。しかし、マルチメータとオシロスコープの違いは「時間の経過」の扱いにあります。基本的にマルチメータは時間軸を持たず、時間情報を表示できません。時間情報なしに数値のみを表示します。反応できる交流電圧の周波数にも大きな差があります。オシロスコープに比べ、マルチメータはずっと低い周波数にしか反応できません。
オシロスコープのメリット
「時間の経緯」を表示できることのメリットは計り知れず、マルチメータでは実現できない多大な効用をユーザに与えることができます(図1-6)。
例えば、研究に解を与えたり、積年の不具合を解消したり、今の仕事の効率をアップすることができます。プロはもちろんのこと、さらなる高みを目指すアマチュアにとってもオシロスコープを知り、使いこなすことは成功への大きなステップなのです。
ただ、「時間の経緯」を表示することのできるオシロスコープの操作は、マルチメータよりも複雑です。しかし要点を押さえながら理解を試みれば、決して難しいものではありません。
オシロスコープの使い方と見方
前項ではオシロスコープとは一体どういったものなのかについて述べました。ここからは、オシロスコープの基本的な使い方と見方について解説していきます。
表示画面の見方
オシロスコープは「電圧の挙動」を「時間の経過」にそって線表示するものです(図2-1)。
表示画面に波形を描く方法は心電図の描き方と似ています。波形は左から右へ等速で移動しながら電圧の大きさに応じて上下します。電圧が大きくなると上に向い、小さくなると下に向います。左が古い時間、右が新しい時間です。
オシロスコープの表示画面は、基本的に縦方向が電圧、横方向が時間を表した2次元表示です。表示画面の縦方向は電圧軸として電圧目盛、横方向は時間軸として時間目盛が刻まれています。
表示画面の上から下までは8分割されており、例えば8分割された1目盛あたりを1ボルト(1V/div:「1ボルトパーデビジョン」と呼ぶ)だとすると、その画面には8ボルトの電圧区間を表示できます。
時間軸もある幅を持った時間区間として表示されます。表示画面の左端から右端まで10分割されており、例えば10分割された1目盛あたりを1μs(1μs/div:「1マイクロセックパーデビジョン」と呼ぶ)だとすると、その画面には10μsの時間区間を表示できます。
波形の見え方の調整
波形が垂直軸(電圧軸)からはみ出す場合や、波形の高さ(波形振幅)が小さすぎて上下変動がよく判別できない場合には、垂直軸Scale(スケール)ツマミで波形を見やすい大きさに調整することができます。調整後、波形振幅が目盛のいくつ分であるかを知ることにより、波形振幅を測定できます。仮に1V/divで波形振幅が6.4目盛分あったとすると、6.4Vの波形振幅だと分かります(図2-2)。
波形が水平軸(時間軸)においてギュッと詰まり過ぎた場合や、逆に間延びし過ぎた場合、水平軸Scaleツマミを操作して波形を観測しやすい形に調整することができます。調整後、波形の繰り返しが目盛のいくつ分であるかを知ることにより、波形の周期(繰り返し時間)を測定できます。
例えば1μs/divで波形が8.4目盛ごとの繰り返しだった場合には、8.4μsの周期だと分かります(図2-2)。また垂直軸Position(ポジション)ツマミと水平軸Position(ポジション)ツマミにより、波形の上下左右の位置を調節できます。
トリガのかけ方
オシロスコープの画面を見ていると、そこに巧みな技が隠されていることに気付きます。それが「トリガ」という技(機能)です。波形を表示画面に何度も何度も重ね描くとき、このトリガ機能が働いています。水平軸上の同じ位置にその波形たちが重ね描かれるように、横方向にその波形たちがズレたりしないように、トリガ機能が働いているのです(図2-3)。
同じ位置にその波形たちを重ね描くようにトリガを操作することを「トリガを掛ける」と表現します。シンプルな繰り返し波形ならばトリガを掛けることは簡単です。トリガツマミを操作して、波形振幅の中心にトリガレベルを設定すればよいのです。
ただし、周期性が複数混在した複雑な繰り返し波形については、トリガを掛けるためのコツが必要です。まず、波形をざっと見て、混在した複数の周期の中からいちばん遅い周期を見つけます。そして、いちばん遅い周期を持つ特定部分にトリガレベルを設定します(図2-4)。
測定する信号へのつなぎ方
測定する信号(被測定信号)をオシロスコープで観測するには、まず、その信号をオシロスコープの入力端子(多くの場合はBNCコネクタ)に導かなければなりません。この方法は2つあります。1つは同軸ケーブル(多くの場合はBNCケーブル)を介して、オシロスコープの入力端子に導く方法です。そしてもう1つは「プローブ」と呼ばれる入力ツールを介して、オシロスコープの入力端子に導く方法です(写真2-1)。
同軸ケーブルを使用するケースは、被測定信号が出力端子を持っている場合や、ケーブル特性(インピーダンス、例えば50Ω)が負荷となり、回路動作に悪影響を与えない場合に限られます。同軸ケーブルによる接続は信号を劣化させる要素の少ない優れた方法ですが、多くの場合はプローブが使われます。
プローブは特殊な先端形状と高いインピーダンスを持つことにより、被測定回路の多種多様なポイントにアクセス可能です。プローブは利便性が高く、ほとんどのオシロスコープでは標準付属品となっています。被測定信号を正しく表示し正確に測定する過程において、プローブは非常に大きな役割を担っています。
ここではオシロスコープの使い方について説明しました。ここで説明した内容は基本中の基本ですが、少し難しいと感じた方もいることでしょう。次項では、そんな方もびっくりするような簡易なかつ便利な機能を紹介します。
オシロスコープの使い方|便利な機能
メーカや機種によって多少の違いはありますが、オシロスコープには基本操作に加えて便利な機能が付いています(写真3-1)。
基本操作をマスターした上で、これらの機能を使うとより正確な測定ができたり、仕事の効率を上げたりすることができます。ここでは、そのような便利な機能について、代表的なものを取り上げていきます。
工場出荷時設定とパネル設定の保存呼出
1台のオシロスコープを複数のユーザで共有する場合、前ユーザが残した設定が残っていて、別のユーザの操作を妨げる場合があります。この場合、「工場出荷時設定」機能が有効です。この機能により前ユーザの残した設定を初期化し、工場出荷時のシンプルな設定に戻してくれます。
しかし前ユーザは自分の設定を初期化されてしまうので、次に使う際には再度設定し直さなければならないのでは...という心配はいりません。こういったときのために「パネル設定の保存呼出」があります。次も同じ設定でオシロスコープを使う場合のために、この機能を使ってツマミやボタンを含むパネルのすべての設定を保存しておけばよいのです。再度オシロスコープを使う際には、その設定を呼び出すことができます。
オートセット
基本設定をオシロスコープに任せてしまうという機能が「オートセット」です。オシロスコープの操作を理解していない人でも、この機能を使えばオシロスコープが波形を正しく表示してくれます。
ただし、オートセット機能は万能ではありません。波形が特殊な形状の場合には、正しい表示ができないということもあります。この場合には、さらに基本的な操作を行うツマミ類を操作して望ましい表示を行う必要があります。そのためこの機能は、基本操作を理解した上で使うよう心がけなければなりません。
カーソルと波形自動測定
オシロスコープで波形の振幅や周期を測定するには、3つの方法があります。1つ目は、すでに説明したように目で見る方法です。2つ目はカーソルを使う方法で、3つ目は自動測定による方法です。
カーソルを使うには、2本の横線によって測定したい箇所を挟み込むだけです(図3-1)。
その間の電圧は自動的に測定され画面に表示されます。同様に2本の縦線によって挟み込むと、周期が数値化されて画面に表示されます(図3-2)。
カーソル操作によるヒューマンエラーをなくす機能が「波形自動測定」機能です(図3-3)。
この波形自動測定機能では、ユーザは何も操作する必要はありません。メニューから測定したい項目を選ぶだけです。自動測定された結果は数値で画面に表示されます。価格の低いオシロスコープでも測定できる項目は10種以上あり、多くの測定をカバーします。
画面イメージデータと波形数値データ
ほとんどのオシロスコープは、表示画面全体を写真に撮るように、画面イメージデータを記録媒体に保存できます。パソコンで作る実験レポートに即使用可能です。また、表示されている波形自体もCSV形式の数値データとして保存できるので、表計算ソフトウェアなどで使えます。さらには、今表示されている波形を保存しておいて、後日、再びオシロスコープの画面に再表示することさえできます。
アベレージとピークディテクト
オシロスコープは波形をデジタル化し、波形のデジタルデータをオシロスコープ内部に保存します。これらのデータをデジタル信号として処理する(デジタル信号処理を行う)ことにより、ユーザに大きなメリットを与える多くの機能を持っています。
この例として「アベレージ」と「ピークディテクト」という機能があります。「アベレージ」の機能を使うだけで信号と非同期に発生するノイズを見事に取り除くことができます。逆に「ピークディテクト」機能を使えば、通常では取り逃がすほど極細なパルス性ノイズなどもきちんと捉えることができます。
ここでは、オシロスコープの便利な機能の代表的なものについて紹介しました。ただし、これらの機能は、メーカや機種によっては搭載されていないものもあります。ここで注意しなければならないのは、便利な機能だけを知っていても、それはオシロスコープを使いこなせているとは言えません。あくまでも基本操作を理解した上でこれらの便利な機能を使うことが肝心です。
さらに正しい測定を行い、正確な結果を得るためには知っておかなくてはならない注意点もあります。次項では、そのあたりのノウハウについてお話します。
オシロスコープの使い方|注意点
オシロスコープで波形を正確に測定し、正確な結果を得るためには、知っておかなければならないポイントがあります。高性能をうたったオシロスコープを用いても、これらのポイントを外すと正しい測定ができません。ここでは、そういった注意点について述べていきます。
波形は画面に大きく表示する
オシロスコープで測定を行う際には、波形を画面いっぱいに使って表示することが大事です。
デジタルカメラのデジタルズームを例にとりましょう。ご存知かもしれませんが、デジタルズーム機能を使用すると、画質は悪化します。その理由は、デジタルズームはCCDの画素全体に使わず、その一部しか使わないからです。つまり、見た目で画像サイズが小さくならないよう、ひとつ1つの画素を拡大して水増ししているのです。
オシロスコープにおいても、このデジタルズーム機能を使ったときと同じことが起きます。複数の波形を画面に表示するとき、互いが重なり合う表示を嫌って、それぞれの振幅を小さくして、縦に並べることがあります。表示としては「良い」のですが、測定の精度を問う場合には「良くない」ことを知っておく必要があります。精度良く測定したい場合は、波形を画面いっぱいに表示してください(図4-1)。
波形どうしが重なり合ってチャネルの見分けに苦労する場合は、各チャネルごとに異なる色を使う「カラーオシロスコープ」が便利です。
サンプルポイントの数を増やして波形を取り込む
オシロスコープの波形は線で表現されます。そのため、なかなか気付きにくいのですが、実は多数の点(サンプルポイント)とその間をつなぐ線で構成されています。基本的に線はサンプルポイントとサンプルポイントをつないでいるだけなので、波形をいかに正確に表示できるかは、サンプルポイントの数に直結します(図4-2)。
高速に波形を取り込む
多くのサンプルポイントを得るには、波形をデジタル化する速度(サンプルレート)を速くします。多くのサンプルポイントを得て描かれた波形はデジタル化される前の元波形に近いので、正確な測定が行えます(図4-3)。
ここで注意すべき点があります。それは、サンプルレートと観測できる時間は反比例の関係にあるということです。サンプルレートを速くした場合、観測できる時間幅が短くなるのです。それでは、高速なサンプルレートを行いつつも長い観測時間幅を実現し、正確な測定を行いたいといった場合はどうすればよいのでしょうか。そういうときには、長いレコード長(メモリ長)を使います。これらの間には、
の関係があります。ただしむやみに長いレコード長にすることはお勧めしません。上記の関係式を用いて、必要な長さのレコード長にすることが賢明です。
エイリアシングを防ぐ
ここまでは、ある周波数の波形をそれより速いサンプルレートで取り込む(サンプリングする)ことを前提に話を進めてきました。逆に、ある周波数の波形をそれよりも遅いサンプルレートでサンプリングした場合、何が起こるでしょうか。このとき、「エイリアシング」と呼ばれるだまし絵のような現象が起こります。図4.4のように元の波形(入力信号)と相似した、より低い周波数の波形が出現します。
このエイリアシング波形を表示してしまっては、正確な測定など望むべくもありません。この現象を出現させないことが肝心です。そのためのポイントは3つあります。
1つ目はDPO(Digital Phosphor Oscilloscope)と呼ばれるオシロスコープを使うことです。高速タイプのDPO はエイリアシングを起こしません。
2つ目は見知らぬ信号を表示するときに時間軸ツマミを一度右に回し切った後、左向きに回しながら望む設定を探すことです。
そして3つ目はエンベロープ取り込み機能、またはピーク検出取り込み機能を使って、画面に表示された波形が塗りつぶされるかどうかを確認することです(図4-5)。このとき、エイリアシングが起きている場合には塗りつぶされます。
プローブに関する注意事項
第2項でも述べた「プローブ」についても重要なノウハウが2つあります。それは「プローブ補正」を行うことと「GNDリードによる共振」に気をつけることです。
プローブ補正を忘れると、プローブの周波数特性が平坦ではなくなります。そうすると、高い周波数における振幅が本来の大きさと違って見えます。例えば測定対象がきれいな矩形波(方形波ともいう)の場合、そのパルスの幅によって振幅や形状が違って見えます。広いパルス幅では波形のエッジ部が尖った形状になったり丸まった形状になり、細いパルス幅では振幅が違って見えます(図4-6)。
このような状態に気付かず測定を行えば、測定結果は大きな誤差を持つことになります。プローブの補正は1つの儀式だと考え、必ず行いましょう。
さらに注意しなくてはならないもう1つの重要事項は、「GNDリードによる共振」に気を付けるです。これも深刻な測定誤差を生みます。これはGNDリードのインダクタンスとプローブ入力容量によるLC共振が原因で起こるもので、「リンギング」と呼ばれる減衰振動が波形のエッジ部に発生するという現象です。本来の信号には無い波形(リンギング)をプローブが作り出してしまうのです。GNDリードは最短にするよう心掛け、必要に応じて別売アダプタなどを使用しましょう(図4-7)。
次項では、被測定波形から最適のオシロスコープを選択するノウハウについてお話します。
オシロスコープの選び方
波形を正しく観測するには、それに合わせたオシロスコープを使用する必要があります。ここでは、オシロスコープの選び方について述べていきます。
周波数帯域
質問
周波数帯域100MHzのオシロスコープは、100MHzのサイン波(図5-1)の測定に適するでしょうか。
回答
不思議に思えるかも知れませんが、答えは「No」です。
これには周波数帯域の定義が大いに関わっています。低い周波数から高い周波数まで振幅が一定のサイン波をオシロスコープに入力したとします。ところが、現実のオシロスコープでは、サイン波の周波数が高くなるにつれ、表示される振幅は徐々に減少していきます(図5-2(a))。
周波数帯域は、基準となる(十分低い)周波数の振幅に比較して3dB(エネルギーで50%、電圧で約30%)減衰する周波数と定義されています。つまり、周波数帯域100MHzのオシロスコープで100MHzのサイン波を測定すると、表示される信号の大きさ(振幅)は実際の信号より小さく見え、約70%の大きさにしか見えないのです。30%も小さく見えるということは、30%もの誤差があると言えます。電気測定において、この誤差は無視できる大きさではないので、「測定には適さない」ということになります。
それでは、100MHzのサイン波の測定には、どのくらいの周波数帯域があればよいのでしょうか。これには、その誤差をどこまで許容するかということと、オシロスコープ固有の周波数特性(周波数が高くなるにつれ振幅がどのように変化するかという特性)によりますが、誤差3%、周波数特性はガウス曲線(ガウシアンカーブ)に近似していると仮定しましょう(図5-2(b))※注5-1。
周波数が高くなるにつれ、サイン波の振幅は減少します。特性カーブをなぞり、誤差3%のラインと周波数特性カーブとの交点を求めると、その周波数は周波数帯域の約1/3であることが分かります。つまり、100MHzのサイン波の測定には300MHzくらいの周波数帯域を持つオシロスコープを選べば、誤差3%くらいで測定できます。これをオシロスコープにおける「サイン波の測定に際しての3倍法則」と呼びましょう。この法則はGHzの周波数帯域を持つオシロスコープには当てはまりませんが、MHz帯域のオシロスコープにおけるサイン波の測定にはよく当てはまります。
次に、サイン波ではなく矩形波の場合には、どのように考えればよいのでしょうか。その答えは「立ち上り時間」にあります。
※注5-1:周波数特性がガウス曲線に近似していると、立ち上り時間0秒のステップ波形をオシロスコープに入力した場合、オシロスコープ自体の立ち上り応答が最も素直な特性となる。そのためMHz帯域のオシロスコープにおいては、周波数特性を好んでこの曲線に近似させる。
立ち上り時間と立ち下り時間
質問
0秒で0から1へ状態遷移する理想的なステップ波形がオシロスコープに入力された場合、オシロスコープに表示される立ち上り時間は0秒でしょうか。
回答
この答えは「No」です。
オシロスコープの性能には限界があり、その限界がオシロスコープ自体の立ち上り時間として表示され、波形は少し斜めに表示されます(図5-3)。
ここで、「立ち上り時間」とは、電源投入してからオシロスコープが使用可能状態になるまでの時間ではありません。ステップ波形が0から1に変化するとき、その変化に要する時間のことです。
現実の波形において変化の開始と終了を見極めるのは困難です。したがって、ステップ波形の振幅を100%とし、振幅が10%に達した点を変化の開始点、90%に達した点を変化の終了点とします。その開始点から終了点までの時間が「立ち上り時間」と規定されています。
このオシロスコープ自体の立ち上り時間は、測定対象の立ち上り時間の測定結果を左右することがあります。オシロスコープに表示された立ち上り時間は「測定対象のみの立ち上り時間」ではなく「オシロスコープ自体の立ち上り時間」にも影響されたものだからです。言い換えると、オシロスコープ自体の立ち上り時間は、その測定における誤差要因だといえます(式5-1)。
この式5-1から、オシロスコープ自体の立ち上り時間Toが測定対象の立ち上り時間Tsに比べ十分に小さければ、誤差が少ないことになります。「オシロスコープ自体の立ち上り時間」と「測定対象の立ち上り時間」の比率Ts/Toとそれによる誤差をグラフ化したものが次の図5-4です。
これは、ガウス曲線の周波数特性を持つ、MHz帯のオシロスコープについて適用できます。仮に誤差を3%とすると、グラフとの交点からオシロスコープ自体の立ち上り時間は測定対象の立ち上り時間よりも4倍以上高速である必要があることが分かります。実際の測定においては、まず測定する矩形波やパルス波の形に注目してください。その中で一番急峻に変化する部分を見つけ、その立ち上り時間をオシロスコープ選択の基準とします(図5-5)。
その立ち上り時間より4倍以上高速の立ち上り時間を持つオシロスコープを選択すれば、立ち上り時間測定の誤差を3%くらいに収めることができます。また「立ち上り時間」と「周波数帯域」は反比例の関係があり、周波数帯域がガウス曲線に近似している場合、式5-2で表されます。
周波数帯域が広いと立ち上がり時間は急峻したがって立ち上り時間が分らなくても周波数帯域が分れば、立ち上り時間は計算で求めることができます。
サンプルレート
先に述べたように、オシロスコープは波形を点で表現しています。サンプルレートは、どのくらい多くの点で波形を表すことができるかを示すものです(図5-6)。
この性能は高ければ高いほどよいのですが、そのぶん、オシロスコープの価格も高くなります。必要となるサンプルレートが分れば、適切な価格のオシロスコープを選ぶことができます。ここでも波形の形により、サイン波の場合とパルス波に分けて考えましょう。
サイン波の場合のサンプルレート
理論では(サンプリング定理による)サイン波の繰り返し(周波数)より2倍以上速いサンプルレートを用いれば、サイン波形の再現ができます。実際は、もう少し速いサンプルレートを用い、補間という処理を行います。
サイン波の周波数よりサンプルレートが10倍速ければ、サイン波の1つの波(1周期)を10個の点で表現できますし、5倍速ければ、5個の点で表現できます。5個以上の点があれば、サイン波はもちろん、サイン波的な波形(少し歪んだサイン波)も画面に描くことが容易です。したがって観測すべき波形に対し、サンプルレートが5倍以上高速のオシロスコープを選びましょう※注5-2。
※注5-2:使用するチャネル数が増えれば、サンプルレートが低下するオシロスコープもあるので、注意が必要。
パルス波の場合のサンプルレート
パルス波が繰り返しのパルス波であろうと、単発のパルス波であろうと、ここで注目すべきは最も高速に変化する立ち上り(立ち下り)部分のみです。その部分を4個から5個の点で表現できるようなサンプルレートが適切です(図5-7)。
このようなサンプルレートでサンプリングする(点を打って表現する)と、立ち上り部分を適切に画面に描くことができます。最も高速の部分が適切に描けるので、ほかの低速に変化する部分も問題なく描けます。立ち上り時間の1/4〜1/5がサンプル間隔なので、式5-3からサンプルレートが分かります。
このように計算されたサンプルレートを持つオシロスコープを選びましょう。
レコード長
必要とされるレコード長は「必要とする観測時間」と「使用するサンプルレート」から計算されます(式5-4)。
レコード長が短い場合、長い観測時間するにはサンプル間隔が粗くならざるを得ません。レコード長の一部を拡大表示した場合、この荒いサンプルレートの影響が現れます(図5-8)。
前項のように「使用するサンプルレート」は決めることができるので、「必要とする観測時間」が分れば、式5-4によりレコード長が計算されます。このレコード長を装備するオシロスコープを選びましょう。ただし、使用するチャネル数によりレコード長が変動するオシロスコープがあります。この場合、使用するチャネル数におけるレコード長を確認する必要があります。
最大入力電圧
測定対象の波形の大きさ(振幅)はオシロスコープの選択時に考慮しなければならない項目の1つです。多くのオシロスコープには、入力BNC端子の近くに電圧(200Vrms〜300Vrmsくらい)が表示されています(写真6-1)。
この電圧は、オシロスコープに印加できる最大の電圧です。それより大きな電圧が印加されると、オシロスコープは壊れます。それでは仮に周波数帯域100MHzのオシロスコープに「300Vrms」と表示されていたとして、これに周波数100MHz、振幅300Vrmsの信号を入力したらどうなるでしょうか。
入力する信号は300Vrms以内だからオシロスコープは壊れないと思うかもしれません。しかし、この条件ではオシロスコープは壊れてしまいます。300Vrmsは「最大入力電圧」と呼ばれ、入力できる電圧のうち、最大の電圧を表します。最大入力電圧は低い周波数帯域(約100kHzくらいより低い帯域)において実現されますが、許容できる入力電圧は高い周波数においてどんどん小さくなります。一般的に、3MHzを超えると13Vくらいにまで低下します。これを「デレーティング特性」(図6-1)といいます。
それでは、高い周波数の大きな電圧を観測するにはどうすればよいのでしょうか。その答えはプローブにあります。プローブには多くの種類があり、高電圧プローブ という種類のプローブをオシロスコープと併用すれば、測定できる電圧範囲を拡大することができます。このプローブにも同様なデレーティング特性がありますが、オシロスコープのみの場合より大きな電圧が測定できるようになります。写真6-2は、10MHzで4kVピークが測定できる高電圧プローブの一例です。
最高感度
測定対象の波形の小ささ(振幅)もオシロスコープの選択時に考慮しなければならない項目です。測定する波形の振幅が小さいときは、できる限り高感度のオシロスコープを選ぶ必要があります。どの程度小さな波形をどの程度大きく画面に表示できるかは、「垂直軸感度」という仕様に示されています。この値が小さければ小さいほど、小さな波形を測定できます。
垂直軸感度は一般に、数mV/div程度です。仮に1mV/divだとすると、1mVの大きさの波形は1目盛分(画面には一般に8目盛ある)の振幅で画面に表示されます。しかし1目盛分の振幅は測定に際して十分な大きさとはいえません。第4項でも述べたように、振幅はできる限り大きく、できれば画面いっぱいに表示したいところです。しかし画面いっぱいに表示できない小さな波形を測定しなくてはならない場合、ノイズを低減する機能があれば、非常に効果的です。
こういったときに有効な機能である「アベレージ機能」や「ハイレゾリューション機能」の有無もオシロスコープ選択の要素のひとつです。
差動入力
測定対象の波形がGND(グランドまたはアースとも呼ぶ)を基準にした波形であるかどうかもオシロスコープ選択に際して考慮しなければなりません。一般的なオシロスコープは複数のチャネルを持ちますが、その入力端子の外側金属部は互いに接続されており、さらにGNDに落とされて(接続されて)います(図6-2)。
複数の波形を1台のオシロスコープで観測するということは、すべての波形の基準を互いに接続したうえ、それをGNDに落とす(接続する)ことに他なりません。波形の基準がGNDに落とされるわけなので、そもそもオシロスコープに接続する波形はGNDを基準にした波形でなくてはなりません。それでは基準がGNDではなく、ある電位をもつ場合は波形がオシロスコープでは測れないのでしょうか。
いいえ、ご安心ください。そのような波形の観測にはいくつかの方法があります。その1つとして、各チャネル間が絶縁された特殊なオシロスコープを使うという方法もあります(図6-3、写真6-3)。
例えば、図6-4に示すような方法では、基準電圧が最大600Vrmsまでの測定が行えます。
ほかの方法もあります。それは、普通のオシロスコープと差動プローブ(写真6-4)を組み合わせる方法です。基準電位が±35V以内ならシグナルインテグリティに優れた差動プローブ が使えます。
また、基準電圧が±35Vを超える場合には、さらに高い電圧に対応した高電圧差動プローブ (写真6-5、図6-5)もあります。
オシロスコープの使用例|グリッチとノイズ測定
前項までは、オシロスコープの使い方について述べてきました。それでは、オシロスコープを使って、どのような測定ができるのでしょうか。ここからは、その実例をいくつか紹介します。ここでのお話は専門用語が多く、多少難しいかもしれません。しかし実例を知ることにより、オシロスコープは単なる波形表示装置ではなく、エンジニアの直面する問題を解決する強力なツールであることが分かるでしょう。
グリッチの測定
デジタル回路設計において、障害を発生する大きな要因のひとつに「グリッチ」と呼ばれる異常パルスがあります。グリッチは正常なデジタル信号のパルス幅に比べ、そのパルス幅が極めて細いため、その検知は容易ではありません。正常のデジタル信号に適したサンプルレートを用いると、それはグリッチの幅に対して不十分なサンプルレートとなります(第4項を参照)。その結果、グリッチは表示できません(図7-1)。
「ピークディテクト」を使った例
このようなサンプルポイントの狭間に隠れてしまいがちなグリッチを発見し、その大きさを測定する例を紹介します。まず、グリッチの存在を見るためには、波形取り込みの1つである「ピークディテクト」という機能が有効です(図7-2)。
ピークディテクトは、サンプルレートが遅いにもかかわらず、細いパルスを検出する特殊な仕組みを持つからです。また、図7-3はセンタ部分を拡大したものです。
なお「ピークディテクト」機能は、オシロスコープのほとんどの機種において、波形取り込み方式を選択するメニューの中にあり、それを選択するだけで機能します。
「パルス幅トリガ」を使った例
次にトリガの一種である「パルス幅トリガ」機能も有効です(図7-4)。
パルス幅トリガの条件を通常パルスのパルス幅(この例では50ms)より小さく設定する(この例では49.9ms)と、異常な極細パルス(この例では35ns)がトリガ条件に合致することになり、グリッチ波形そのものを捕らえることができます。グリッチの発生頻度がそこそこ高いのであれば、この手法によりグリッチが発生しているか否かを判定することができます。
「パーシスタンス表示」で異常なグリッチを測定
さらに波形表示方法を選ぶことにより、グリッチ波形がどの程度の頻度で発生しているかも測定できます。エッジトリガレベルの振幅を低めに設定し、「パーシスタンス表示」(重ね書き表示)にしてみましょう。
パーシスタンス表示は、長時間にわたって表示した波形を画面に保持する機能です。まれに発生する異常なグリッチも画面に保持し続けることになるので、1度でも捉えられたグリッチは画面にはっきりと残ります。異常なグリッチは、正常な波形の濃さに比べて薄めに表現されるので、描かれた波形の明るさが発生の頻度に直結し、グリッチがどの程度の頻度で発生しているかを知る手がかりとなります(図7-5)。
「パーシスタンス表示」機能は、オシロスコープのほとんどの機種において画面を選択するメニューの中にあり、それを選択するだけで機能します。このようにさまざまな機能を使い悪玉グリッチを検出し、発生した障害の原因追及への手掛かりとすることができます。
ノイズの測定
設計した回路に意図しないノイズが発生することがあります。これはエンジニアにとって頭の痛い問題です。ノイズの特性は、図7-6のように時間領域で測定してもなかなか知ることができません。
太く膨らんだトレースがノイズの存在を示すだけです。
「FFT」機能を使う
そこで、FFT(Fast Fourier Transform:高速フーリエ変換)と呼ばれる機能を使ってみましょう(図7-7)。
これにより周波数領域への変換を行い、ノイズを構成する周波数成分とその大きさを知ることができます。ノイズを構成する周波数成分が分かれば、ノイズの発生原因が特定できます。ノイズの成分をシステムクロック、オシレータ、リードライトストロボ、表示タイミング、スイッチング電源などといった既知のシステム信号の周波数と照合します。同じ周波数成分を持つものが犯人です。
なお、「FFT」機能は、オシロスコープのほとんどの機種において演算機能を選択するメニューの中にあり、それを選択するだけで動作します。
FFTを正しく使うには
FFTを使うにあたり、注意しなければならないことがあります。まず、メニューによりウィンドウ(窓関数)を適正に選ぶことです。これにより正確な表示レベルになり、周波数の解像度が最も高くなります。なお、図7-7の例では周波数をより詳しく観測する目的でHanningウィンドウを選びました。
周波数成分を読み取るには「カーソル」を使います。オシロスコープのたいていの機種では、カーソルを起動してメニューから「周波数」を選択すれば、準備完了です。カーソルをFFT波形の中で一番大きなレベル(画面の真ん中から少し左より)に合わせてみましょう。そうするとその周波数が簡単に読み取れます。
図7-7の例では「20MHz」と読み取れました。この20MHzはそのシステムクロックの周波数と一致します。つまりシステムクロック信号が漏れ込むことにより、意図しない大きなノイズを発生させていたことが突き止められました。
オシロスコープの使用例|電源設計
ここでは、オシロスコープの応用例として、電源設計での実例を紹介します。
電源供給ラインの電流高調波解析
電源の設計においては、AC100V供給ラインに規定以上の電流歪を発生させないことを考慮しなければなりません。言い換えると「EN61000-3-2」という規格(EN規格の高調波電流規制)に適合させる必要があります。
理想的にはAC100V供給ラインから見て、当該電源が線形の(一定の)負荷になると良いのですが、現実の電源はそうなりません。複雑に変動する負荷に伴い、AC100V供給ラインに流れる電流も複雑に変化します。その結果、AC100V供給ラインに流れる電流は歪みや高調波が発生します。その高調波のレベルがEN61000-3-2の規格内であるかどうかをオシロスコープで実測することができます。
まず、電流プローブを被測定電源のAC100V供給ラインに接続し、電流をオシロスコープに取り込みます(図8-1)。
この波形を各周波数成分に分解するためFFT(高速フーリエ変換)を掛け、基本波(50Hzまたは60Hz)とその整数倍の高調波群を表示します(図8-2)。
なお、FFTのウィンドウメニューを適正に選ぶことにより、より正確なレベル表示にもなりますし、より周波数の解像度が高い表示にもなります。図8-2の例ではFlattopウィンドウを選び、正確な振幅を測定しました。電流振幅を読み取るには、カーソルが便利です。カーソルを任意の高調波に合わせるとその高調波の振幅を簡単に読み取ることができます。
各高調波の振幅を測定し、EN61000-3-2規格に照らせば、それらが規格内であるかどうかを確認することができます。これはオシロスコープを手動操作することでも求められますが、多少の手数を要します。そこで「ボタンの一押し感覚」で結果を得ることのできる専用ソフトウェア(図8-3)もあります。
スイッチング素子の瞬時電力の測定
オシロスコープを使えば、電源に使われるスイッチング素子にかかる瞬時電力を測定することができます。その電力のほとんどは、スイッチング素子によって消費されるロス(熱)です。スイッチング電源の効率を左右する瞬時電力測定はとても重要です。まずスイッチング動作により状態が変化する電圧波形と電流波形をオシロスコープに取り込みます(図8-4)。
取り込んだ電圧波形と電流波形から、オシロスコープの波形演算機能(掛け算)を使って簡単に瞬時電力波形を作り出すことができます。瞬時電力波形もまたスイッチング周期に従って状態変化する波形となります(図8-5)。
自動測定機能を使って瞬時電力波形の任意区間の平均値を計算させることにより、電力が求められます。これは、オシロスコープを手動操作することでも求められますが、多少の手数を要します。このようなとき、図8-3でも示したような専用ソフトウェアを利用すれば、どの区間を計算の対象とするかをカーソルやメニューで指定するだけで、いとも簡単に電力損失が計算できます(図8-6)。
電源品質パラメータの測定
電源品質を表す諸特性(有効電力、皮相電力、力率など)もオシロスコープで簡単に求めることができます。まず電源に供給される電圧波形と電流波形をオシロスコープに取り込みます。波形数は少し多く取り込むのがコツです(図8-7)。
有効電力(単位:W)
有効電力を求める場合、まずはオシロスコープの波形演算機能により、電力波形と電流波形を掛け合わせて電力波形を作ります。そして自動測定機能により、電力波形の平均値を計算すれば求められます。
皮相電力(単位:VA)
皮相電力は自動測定機能により電圧波形の実行値と、同じく電流波形の実行値を計算し、それら2つの実行値を(電卓などで)掛け算すれば求められます。これは有効電力のように動的な波形から求める電力とは異なり、単純な数値(2つの実効値)を掛け算するだけで計算できる電力です。
力率
力率は上記で求めた有効電力を皮相電力で割算すれば計算できます。これらは、オシロスコープを手動操作することでも求めることができますが、やはり多少の手数を要します。このとき、先ほども紹介した専用ソフトウェアを使えば、「ボタンの一押し感覚」で簡単に結果を得ることができます(図8-8)。
安全動作領域の測定
電源投入時や最大負荷時には、スイッチング素子にストレスがかかります。スイッチング素子の電圧や電流が規格以上の値となれば、素子の破壊につながります。
これを防ぐため、素子には安全動作領域が規定されています。刻々と複雑に変化する電圧波形と電流波形を時間軸上に表示してみても、素子にかかるストレスは見えてきません。この場合、電圧波形と電流波形をXY表示することにより安全動作領域の違反が見えやすくなり、素子にかかるストレスを一目で測定することができます。
これは、オシロスコープを手動操作することでも求めることができますが、多少の手数を要します。そこで、図8-9のような専用ソフトウェアを使えば、簡単に結果を得ることができます。
まとめ|オシロスコープの使い方と見方
本記事では、最初に「オシロスコープとは何か」から始め、基本的な使い方や見方、機能の説明に加え、オシロスコープを使った実例についてお話してきました。オシロスコープはエンジニアにとって最も身近な汎用計測器であると同時に、特定の測定に特化した強力な専用機でもあります。オシロスコープはこの上ない強力なツールであり、使いこなすことでエンジニアの仕事を確実に効率アップすることができます。本記事により、オシロスコープを身近に感じていただき、仕事の効率アップのきっかけにしていただけたら幸いです。
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